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Gipsy Rumbaって何?
What is "Gipsy Rumba"?
コンパス
Gipsy RumbaとRumba Flamenca
音楽そのものの持つ性質
他ジャンルの音楽との融合
Flamencoはアート、Gipsy Rumbaはエンターテインメント
コンパス
ご存知の通り、ジプシールンバはフラメンコギターを使い、パルマ(手拍子)、カンテ(歌)、ハレオ(掛け声)などの音楽的特徴を見ても、フラメンコから産み出されたものであることは、一目(一聴)瞭然である。
では、フラメンコとジプシールンバは同じものと考えて良いのであろうか?
これは結論から先に言うと、「両者は似て非なるもの。全く違うもの」と考えた方良い。決定的に違う所は、コンパス(拍の定型)の有無である。フラメンコは4小節12拍をリズムの1単位とし、その12拍の中の何処にアクセントを置くかによってリズムの型、つまりコンパスが決まっている。そのコンパス(リズムの型)を土台にして、踊り、歌、ギターなどで曲を構築する。つまりコンパスによって曲が決まる。フラメンコの世界で俗に言う「形式」といわれる曲の型の根源は、全てコンパスにあるといっても過言ではない。しかしジプシールンバにはこのコンパスが無い。そもそもジプシールンバの祖、Manitas de Plataがコンパスを全く無視して演奏をしていたのだから当然なのだが。
厳密に言えばアクセントを置くところは色々とあるが、基本的に2拍子の力強い「ドン、ドン」というリズムを骨子にしているのがジプシールンバの特徴である。(とは言え、マニタスは2拍子だけを弾いていたのではないし、基本的にはフラメンコの形式で演奏しているのだが、自らの閃き、アイディアを表現するには、拍やコンパスを無視せざるを得なかったということだろう。)
Gipsy RumbaとRumba Flamenca
伝統的なフラメンコの流れには属さないということは明白として、それではフラメンコの中のルンバフラメンカには属さないのか?
ルンバフラメンカはフラメンコの世界では、キューバのリズムであるルンバを取り入れた準フラメンコと位置づけされている。このルンバフラメンカも純粋なるフラメンコではないので、フラメンコ界では重要視されている形式とは言い難い。同じルンバのリズムパターンを持ち、純粋なフラメンコではないが、形態はフラメンコスタイル。この二つは同一と考える向きが圧倒的に多いだろう。
だが、この二つも似て非なるものと考えないと、ただ混乱してしまうだけである。
ではルンバフラメンカとジプシールンバの違いは何か。最も大きな違いはギターの演奏パターンである。ルンバフラメンカのギターのパターンは、軽く流すのが通例である。曲の終わりでテンポアップしていく時に、ゴルペをガンガン入れた、激しくかき鳴らしたりということはあるが、終始激しくということは無く、決まった箇所にアクセントを入れる部分以外は流して弾いている。
しかしジプシールンバは、(静かな曲は除いて)終始激しく、パーカッシブにゴルペ等を入れまくり、そしてかき鳴らしまくりである。実際フラメンコのギタリストの中には、ジプシールンバを否定する人もいる。「それはルンバではない」と。曲調、雰囲気も異なっている。ルンバフラメンカの曲のメロディーの組み立て方はあくまでフラメンコのそのものだがジプシールンバは非常に現代的なメロディーの組み立てであり、ポップである。ラテンバンドがGipsy Kingsの曲を演奏しても今一つピンと来ないことが多いが、フラメンコバンドが演奏してもピンと来ないことが多い。それは、こうした「違い」と「特徴」に気付いていなかったり、見逃していることによるのではないだろうか。
音楽そのものの持つ性質
ジプシールンバ、フラメンコの両方を聴く人がどの程度いるのかは分からないが、違うなというのは何となく分かるのではないだろうか。分かりやすく例えて言うなら、フラメンコはブルーズ、ジプシールンバはロックとでも言えようか。ルーツは同じ処にあるが全く違うものだ。ロックはブルーズから派生し、楽器や音の使い方などはほぼ同じであるが、両者を同一のものとみなすには無理があるし、明らかに異なるものだ。ジプシールンバもフラメンコから派生し、楽器や音の使い方などは似ているが、奏でられる音楽は明らかに異なる。フラメンコでもラテンでもない。それはジプシールンバとしか言いようがないのである。
他ジャンルの音楽との融合
両者の音楽性の違いを別の切り口から見てみると、また違いが明確に表われていて興味深い。最も分かりやすい切り口は、各々が他のジャンルの音楽とどのように結び付いているか、という観点から眺めることである。
フラメンコが結び付いている、交流があるジャンルはジャズ・フュージョンであり、クラシックであろう。Paco de Luzia(*1)がスーパーギタートリオ(*2)に参加して活躍したり、最近はTomatito(*3)がジャズピアニストのMichel Camiloとアルバムを製作したりという事例が有名である。クラシックはVicente Amigo(*4)がオーケストラ用クラシック曲のポエタを自作自演したり、Paco de Luziaが演奏した「アランフェス協奏曲」などがあり、Paco Peña(*5)などは世界的クラシックギタリストのJhon Williams(*6)とコラボレートアルバムを数枚発表している。
対してジプシールンバは、どうだろうか?結び付く相手はポップス、ロックなどである。まずGipsy Kingsの代表曲のようになっているVolareはそもそもイタリアのカンツォーネである。 また、A Mi Maneraはフランク・シナトラが歌っていたMy Way(シナトラもカバーだが)である。 他にジプシールンバでカバーされているものとしては、Hotel California(イーグルス)や、Long Train Runnin(ドゥービーブラザーズ)、Pretty Woman、White Christmasや聖しこの夜、レゲエのOne Love(ボブ・マーリー)などまでやっている。他にも正式音源は出ていないが、ワールドカップ時に日本でもラの歌として有名になったI will Survive(グロリア ゲイナー)をやっていたり、数年前のChico&the Gypsiesのライブでは天城越えがしっかりジプシールンバで演奏されていた。フラメンコはジャズ、フュージョン、クラシックなどのインストゥルメンタル曲、ジプシールンバはポップス、ロックなどの歌モノとやはりそれぞれの性質に合った音楽と繋がるようである。
※注釈
*1) Paco de Luzia(パコ・デ・ルシア)
世界的に知名度、実力ともに並ぶ者のないフラメンコギタリスト。フラメンコギター界の今日における発展はパコなしではありえなかった。フラメンコの枠のみに留まらず、アル・ディメオラ、ジョン・マクラフリンらフュージョンギタリスト達とスーパーギタートリオで活躍したりクラッシックのホアキン・ロドリーゴ作曲「アランフェス協奏曲」をオーケストラを従えてロドリーゴ本人の前で演奏するなど、他ジャンルとの交流、融合にも非常に意欲的である。近年は歌い手に、ベース、パーカッション、踊り手を伴ったセクステットを組織し、世界各地でコンサートを重ねる。
意外なことにGipsy Kingsのメンバーとは大昔(少年期)から知り合いで、仲が良いということである。
*2) スーパーギタートリオ
ジャズ・フュージョンギタリストのアル・ディメオラ、ジョン・マクラフリン、フラメンコギタリストのパコ・デ・ルシアらが1980年代初頭に結成したトリオグループ。
メンバーがラリー・コリエル、ビレリ・ラグレーンに入れ替わったりした後、自然消滅(活動休止)状態にあったが、1995年頃に突如復活した。しかし、最近は表立った活動はしていないようである。
*3) Tomatito(トマティート)
スペインのアルメリア出身のフラメンコギタリスト。1970年代末期から有名なカンタオール、カマロン・デ・ラ・イスラと活動を共にし、各地のリサイタルやフェスティバルに参加し好評を得る。その他もPaco de Luziaなど有名なアーティストとの共演を重ね、1980年代末期からソロ活動を始める。幾つかの優れたレコードを発表し、やがて他ジャンルのミュージシャンとの融合を試みるようになる。ジャズピアニストのミシェル・カミーロとの共演はあまりにも有名である。発表したアルバム「Spain」はラテングラミー賞をも受賞した。また、トニーガトリフ監督作品「Vengo」にギタリストとして出演するなど、活動は多岐に渡る。
*4) Vicente Amigo(ビセンテ アミーゴ)
幼い頃Paco de Luziaがギターを弾く姿を見て、ギタリストを志す。有名なギタリスト、マノロ・サンルーカルらに師事し、類い稀な技術でやがてPacoの後継者とも呼ばれるようになるが、そのギター奏法はフラメンコの伝統スタイルにモダンなテイストを加え、繊細で力強い。ソロアルバムではトランペットやベースを巧みに取り入れた「魂の窓」やフルオーケストラで一大叙事詩をギターで語る「Poeta」が有名。
*5) Paco Peña(パコ ペーニャ)
スペインのコルドバ出身のフラメンコギタリスト。1963年にロンドンに移住し、クラシックギタリストのジョン・ウィリアムス等と共演。数多くのレコードも発表する。
*6) Jhon Williams(ジョン ウイリアムス)
現代クラシックギター界を代表するオーストラリア出身の世界的クラシックギタリスト。現代クラシックギター界の祖、アンドレス・セゴビアに見出され(クラシック)ギター界のプリンスと呼ばれる。人気、実力ともに並ぶものは無いと言っても過言ではない。しかし活動範囲はクラシックにとどまらず、フュージョン、フォルクローレ、フラメンコらのミュージシャン達とも積極的に交流し、共演、共作している。
余談だがジョンの父親はプロのジャズギタリストで、しかもジャンゴ・ラインハルトのマニアであったと言う。
Flamencoはアート、Gipsy Rumbaはエンターテインメント
極端な言い方だが「フラメンコはアート」であり、「ジプシールンバはエンターテインメント」と捉えてよいのではないだろうか。
両者の決定的な違いがコンパス(拍の定型)、ギターの演奏パターンの違いにあるということは述べたし、音楽の性質も全く異質のものであることも明白ではある。
更に見方を変えてみると、これらの違い以外にそれぞれのアーティスト、ミュージシャンのライブ、演奏の場において決定的に違うものがある。それは客席の風景である。フラメンコの演奏される場では聴衆は「見る」、ジプシールンバの演奏される場では聴衆は「楽しむ」、ということに徹するということだ。
フラメンコのライブではもちろんハレオ(掛け声)、パルマ(手拍子)が客席から飛ぶこともある。が、しかし、よほどの通の人で自信のある人で無い限りは演奏者達に向けてハレオを発したり、一緒にパルマを打つということはできない。へたにパルマを打たれるとコンパスが乱れ、意味の無いハレオは演奏者のモチベーションや曲の流れを惑わせてしまう。演奏者達も、そんな余計なことをされるよりも自分達のパフォーマンスをじっくり見てもらって、ドゥエンデ、コラソンを感じ取って欲しいはずだ。観客は腰を落ち着けて鑑賞し、堪能するのである。このスタイルはエンターテインメントというよりはアートである。
対してジプシールンバでは観客は、2拍子のシンプルでありながら非常に力強いリズムに同化し、歌い、踊り、楽しむ。歓声(ハレオ)、手拍子(パルマ)は演奏者のみならず、観客からも飛び交う。観客は演奏者達とともに、とことん楽しむ。このスタイルはアートというよりはエンターテインメントである。
もちろん、フラメンコ、ジプシールンバともに上記のような例には当てはまらない例外もあるが、各々の演奏の場に自らの身を置いてみれば分かるだろう。良し悪しの問題ではないし、優劣の話でもない。出どころは同じで、限りなく似ているように思えても、ジプシールンバはフラメンコとは全く異なる音楽なのだ。
これまでフラメンコとジプシールンバの違い、それぞれの性質について述べてきたが、以下のエピソードが全てを物語っている。
世界的フラメンコギタリストPaco de Luziaが、とあるインタビューで尋ねられた。 「GipsyKingsの音楽についてどう思うか?」と。
Paco曰く「彼らはとても良い音楽を演奏しているし、個人的にも気に入っている。しかしフラメンコではない。」
Gipsy KingsのドキュメンタリービデオでのTonino Baliardoがフラメンコについて語る一コマ。(ギターでフラメンコのブレリアを弾きながら)「フラメンコはコンパスだ。フラメンコはコンパスが全てなんだ。」と。
(K)(L)
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